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大阪地方裁判所 平成元年(行ウ)70号 判決

原告 坂本勉

被告 大阪中央労働基準監督署長

代理人 高木国博 門口廣之 ほか4名

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  天王寺労働基準監督署長(後に被告に統合された)が労働者災害補償保険法に基づき昭和六四年一月六日付で原告に対してなした療養補償不支給決定を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の答弁

主文と同旨

2  本案の答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、株式会社高島屋工作所(以下高島屋工作所という)に勤務していた昭和六三年三月ころ右目偽黄班円孔に罹患した(以下本件疾病という)。

2  原告は天王寺労働基準監督署長に対し、本件疾病につき療養補償給付を請求したところ、同所長が昭和六四年一月六日右不支給決定(以下本件処分という)をしたので、本件処分の取消を求めて平成元年一月一二日大阪労働者災害補償保険審査官に対して審査請求し、その後三か月が経過した。

3  しかしながら、原告は高島屋工作所において同五八年にワードプロセッサー(ワープロ)が導入されて以来同六三年三月までの間ほぼ一貫してワープロ作業に従事したこと、原告は一日あたり多い日で五ないし六時間、少ない日でも二ないし三時間ワープロ作業に従事し、その間休憩・休息はとらなかったこと、ワープロの設置状況や証明などについても改善を要する状態であったことからすると、本件疾病は業務上の過度のワープロ作業に起因するものであり、本件処分は違法である。

4  よって、本件処分の取消を求める。

二  被告の本案前の主張

原告は、本件処分についての再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を得ていないのであるから、本件訴えは不適法である。

三  請求原因に対する認否

請求原因1の事実のうち、原告の発病時期は不知、その余は認める。同2の事実は認める。同3の事実のうち、原告が高島屋工作所においてワープロ作業に従事したことは認め、その余は否認する。

第三証拠<略>

理由

保険給付に関する決定の取消の訴えは、その処分についての再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経た後、又は右再審査請求があった日から三箇月を経過しても裁決がないときに提起できる(行政事件訴訟法八条二項一号、労働者災害補償保険法三七条。同訴えについては、行政事件訴訟法八条一項但し書の「審査請求」は「再審査請求」と読み替える)。しかして、原告が労働保険審査会に対し再審査請求をしたことは本件全証拠によってもこれを認めるに足りない。

よって、本件訴えは不適法であるから却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判官 蒲原範明 土屋哲夫 大竹昭彦)

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